2010年8月、テレビ番組『世界の果てまでイッテQ!』でおなじみのイモトアヤコさんが、ヨーロッパ最高峰・モンブラン(標高4810m)の登頂に挑みました。今回は、単なる登山ではありません。モンブランタキュール、モンモディ、そしてモンブラン本峰をつなぐ“三山縦走”。体力、技術、そして精神力のすべてを試される、まさに命がけの挑戦でした。
出発は午前2時、真っ暗な山肌を懐中電灯の光だけを頼りに進みます。雷が鳴り響き、氷の割れ目・クレバスが行く手を阻む中、強風と極寒の環境はわずかな油断も許しません。仲間やガイドの助けがなければ、頂上に立つことなど到底不可能です。
イモトさん自身も、ブログでこう振り返っています。
「本当にモンブランは今までの挑戦で一番過酷でした。もうガチンコ過ぎて、コントロールがきかないというか……改めて、バラエティーで行く場所じゃねぇと感じましたわ。おそらく体力も技術も足りてない状態でいき、最後はほぼ気力で登ってました。」
イモトさんのブログには、登山中に出会った自分自身の姿も描かれていました。天候回復を願う自分、ここまで来たから絶対に登ると自分に言い聞かせる強い自分、そしてあまりにもダメな石崎さんに呆れる自分……登山をしていなければ出会えなかった自分たちですと。
そして、モンブラン登山を成功させるためには、多くの人の協力が欠かせませんでした。顧問の貫田さん、ガイドの角谷さん、フランソワさん、差し入れを下さったイッテQメンバー、応援歌を作ってくださった持田香織さん、カメラを回しながら過酷な道のりを共に登った石井カメラマン、そして一応石崎さん……。イモトさんはこうも書いています。
「本当に色んな人に助けてもらい、登頂できました。」
頂上から見渡す景色は、疲れや恐怖を一瞬で忘れさせるほど圧倒的でした。眼下に広がる氷河、光を反射して輝く雪原、そして果てしなく続くアルプスの峰々――。モンブラン登頂は、ただの挑戦ではなく、人間の限界と可能性を目の当たりにする経験だったのです。
モンブランの魅力

©Photo AC
ヨーロッパ・アルプスの象徴であるモンブラン(標高4,810m)を一周する「ツール・ド・モンブラン」は、登山愛好者だけでなく、トレッキングファンにも人気の高いロング・トレイルです。全長およそ168kmに及ぶこのコースは、フランス、イタリア、スイスの3ヶ国をまたぎながら、氷河を抱く白銀の峰々や緑豊かな谷、高山植物が咲き誇る山岳風景など、アルプスならではの多彩な自然を存分に楽しむことができます。道中には標高差のある峠や変化に富んだ地形が続き、歩くたびに異なる景観や雰囲気を体験できるのも特徴です。また、国境を越えるたびに文化や食事、山小屋の雰囲気が少しずつ変わるため、自然だけでなく各国の山岳文化にも触れながら歩くことができる、ヨーロッパ屈指のトレッキングコースといえます。
難易度と注意点
- 技術的難易度:高め
岩稜帯や氷雪壁の登攀、クレバス帯の通過など高度な技術が必要です。グーテ小屋からのルートはフレンチグレードでF(易しい)とされますが、岩稜のピッチグレードは最大Ⅱで、ナイフリッジや急斜面も現れます。天候悪化時は凍結により難易度が大幅に上昇します。 - 体力難易度:高め
標高差約1,000m、登りで4〜5時間かかるため、十分な持久力が必要です。高所での行動になるため、高山病リスクも伴います。登頂の可否は体力だけでなく、天候や判断力にも左右されます。 - 高山病リスク:非常に高い
高度順応が不十分だと登頂失敗や健康被害のリスクが大きくなります。 - 登頂率:ルートや体調によって変動
平均約60%。天候の判断やガイド同行によって成功率は大幅に向上します。 - 注意点
- 天候の変化が激しく、暴風や吹雪で中止を余儀なくされることもあります。
- クレバス、落石、雪崩などの危険があり、慎重な行動が必要です。
- ガイドを利用すると、ルート選定や技術サポート、天候判断で安全性が高まります。
国境を越える特別な体験
コース上では、フランス・イタリア・スイスの国境にある峠を歩いて越えることができます。国境ごとに景観や雰囲気が変わり、山ごとの文化や自然の違いを感じながら歩くことができるのが特徴です。
山小屋での宿泊と食事
- 標高1,200m~2,500mにある山小屋に宿泊
- 国境を越えるたびに変化する食事やデザートを楽しめる
- 中盤にはイタリアの町「クールマイユール」でホテルに宿泊し、ゆっくり体を休めることも可能
長期トレッキングも安心
長いコースを歩く場合でも、宿泊先への荷物回送サービスがあり、必要な荷物だけを持ってトレッキングを楽しむことができます。
1週間でも楽しめるハイライト
ツール・ド・モンブラン全168kmを歩くには時間が必要ですが、ハイライト部分だけでも1週間程度で、アルプスの魅力を存分に体験できます。峠や山岳風景、3ヶ国を巡る特別感など、長距離トレイルならではの楽しみが詰まったコースです。
登山のベストシーズン
モンブラン登山のベストシーズンは6月~9月。夏でも天候が変わりやすく、氷河や雪の状態によって難易度が変動します。経験豊富なガイドと同行することが推奨され、装備や天候判断も慎重に行う必要があります。
まとめ
2010年8月のモンブラン登頂は、イモトさんにとって体力・技術・気力の限界を試す過酷な挑戦でした。しかし、この登山を通じて彼女は多くの自分に出会い、支えてくれる仲間やガイドの大切さを実感しました。
モンブランはその美しさと同時に危険も伴う山です。登頂を目指すなら、十分な準備と経験、そして信頼できるガイドとチームが不可欠です。イモトさんの挑戦は、勇気と挑戦心の象徴として、今も多くの人に語り継がれています。
イモトが登った海外の山【一覧表】
年月 | 山名 | 国・地域 | 標高 | 結果 |
---|---|---|---|---|
2009年5月 | キリマンジャロ | タンザニア(アフリカ) | 5895m | 登頂成功 |
2010年8月 | モンブラン(三山縦走) | フランス/イタリア(ヨーロッパ) | 4810m | 登頂成功 |
2011年8月 | キリマンジャロ(2回目) | タンザニア(アフリカ) | 5895m | 登頂成功 |
2012年1月 | アコンカグア | アルゼンチン(南米) | 6961m | 登頂断念 |
2012年9月 | マッターホルン | スイス(ヨーロッパ) | 4478m | 登頂成功 |
2013年10月 | マナスル | ネパール(アジア・ヒマラヤ) | 8163m | 登頂成功 |
2014年4月 | エベレスト | ネパール(アジア・ヒマラヤ) | 8850m | 登頂断念 |
2015年6月 | デナリ(マッキンリー) | アメリカ・アラスカ(北米) | 6168m | 登頂成功 |
2016年8月 | アイガー | スイス(ヨーロッパ) | 3970m | 登頂成功 |
2017年12月 | ヴィンソン・マシフ | 南極大陸 | 4892m | 登頂成功 |
2025年3月 | ブライトホルン(冬山) | スイス(ヨーロッパ) | 4164m | 登頂成功 |
コメント