2025年3月、日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』の登山企画は、スイス・アルプスにある標高4,164mのブライトホルン冬山に挑みました。イモトアヤコさんにとって、7年ぶりの海外本格登山であり、久々に雪山登山部の活動が再開される特別なプロジェクトです。
ブライトホルンは、2012年にマッターホルン登山のトレーニングとして夏山を経験した山でもあり、今回はその冬山版。雪と氷に覆われた世界は全く別物で、過酷さと美しさが同居する極寒のアルプスを舞台に、視聴者に圧倒的な映像体験を届けました。
イッテQ登山部の挑戦
イッテQ登山部はこれまで、マッターホルン、マナスル、エベレスト、アイガーなど世界の名峰に挑戦してきました。今回のブライトホルン登山は、冬山ならではの氷雪の道、極寒の気温、変わりやすい天候に対応しながら進む過酷な挑戦です。
登山部のチームワークは、成功の鍵でした。冷静で頼りになる山男たち、寒さの中でカメラを運ぶ撮影スタッフ、事前準備を徹底した制作チーム。イモトさんは「このチームでなければ登れなかった」と振り返っています。
道中の困難とエピソード

©Photo AC
ブライトホルン登山の道中では、予期せぬトラブルが次々と襲いました。
- 高山病の症状で途中下山するメンバー
- 強風や雪で凍った道を慎重に進む必要がある極寒の環境
さらに、今回の登山ではカメラマンのジャンボさんが1人で撮影を担当。バッテリー充電や荷物管理、機材の運搬まで全て1人で行い、体力を消耗して高山病の症状も現れました。普段ならジャンボさんが映像をガンガン撮ってくれるのですが、ふと振り返ると息を切らす姿にイモトさんはその辛さを実感します。
「このままではいけない」と思ったイモトさんは、自らカメラを手に取り、映像記録を担当。「編集以外は全部自分がやるんだ!」という強い責任感を胸に、登山を続けました。極寒と高地での過酷な状況の中、仲間を支えるため、そして視聴者に美しい景色を届けるため、イモトさんは自らの限界を超え、集中力と体力を最大限に使ったのです。
また、今回の登山では、かつての登山仲間・中島健郎さんが同行できず、その存在の大きさを改めて実感。休憩のたびに飴を配ってくれたこと、しんどい時に励ましてくれたこと、笑顔で撮影してくれたことなど、思い出すたびに寂しさを覚えたといいます。それでも、心の中で健郎さんを感じながら登り続けました。
ブライトホルンの魅力と初級コース
ブライトホルンは標高4,164mのアルプスの名峰で、冬山登山ならではの厳しさと美しさが共存する山です。尖ったピークと氷河に覆われた雪原が広がる山容は、どこから見ても絵になる絶景。特に冬の朝、雪と氷がオレンジ色に染まるご来光は、一生忘れられない光景です。遠くに連なるアルプスの山々、青く透き通る氷河、雪原の静寂…。登る者だけが味わえる、静かで圧倒的な自然の美しさがあります。
ブライトホルンには初級者でも登れるルートがあります。ツェルマットの街からゴンドラを乗り継ぎ、ヨーロッパ最高地点の展望台があるクラインマッターホルン(標高3,820m)にアクセス。ここから登山を開始すると標高差は約340m、往復で3〜4時間程度の比較的短時間で登頂可能です。氷河上を歩くため、所々にクレバスがありますが、経験豊富なガイドが安全なルートを確保します。初級者でも条件を整えれば、ブライトホルンの絶景を体験できます。
難易度と注意点
ブライトホルンは「ヨーロッパで最も登りやすい4000m峰」と言われ、初心者でも挑戦できる山です。しかし標高は4164mと高いため、注意が必要です。
ポイント1:高山病対策
- 標高が高く呼吸がしづらいので、体調管理が大切です。
- ツェルマットで数日間滞在し、軽いハイキングや展望台巡りで高所順応しましょう。
- 水分補給やチョコレート・飴玉など糖分の補給も効果的です。
ポイント2:氷河とクレバス
- 登山ルートは氷河上を歩くため、クレバス(氷河の裂け目)に注意が必要です。
- 不用意に近づくと滑落事故の危険があります。
ポイント3:国際山岳ガイドの同行
- 安全のため、経験豊富なガイドと一緒に登ることが必須です。
- ガイドは安全なルートを知っており、ロープワークやアイゼンの使い方も指導してくれます。
ポイント4:装備と服装
- 登山靴、アイゼン、ヘルメット、防寒着、雨具などを準備しましょう。
- 天候が変わりやすいため、余裕を持った装備が大切です。
ポイント5:体力と事前準備
- 日本出発前の体力トレーニングと、登山中の体調管理が重要です。
- 必要に応じて高山病予防薬(グリコラミンなど)の準備もおすすめです。
ブライトホルンは初心者向けとはいえ、4000m級の雪山です。安全に登るためには、しっかりと準備を整えて臨むことが大切です。
まとめ
ブライトホルン冬山登頂の挑戦は、極寒のアルプスでの過酷さと、息をのむような絶景、そして仲間との絆を改めて実感させてくれるものでした。イモトさんの挑戦からは、「困難な状況でも諦めず、自らの力とチームの力を信じることの大切さ」を教えてもらえます。
今回の登山は、単なる山の記録ではなく、極限の自然と向き合いながら人がどこまで強くなれるかを示す感動のストーリーです。初めての雪山でも、条件を整えればブライトホルンの絶景を体験できるルートがありますので、挑戦したい方はぜひ安全対策と準備をしっかり行いながら、自分だけのアルプスの景色を楽しんでみてください。
厳しさと美しさが同居する山の魅力を、あなた自身の目で確かめる瞬間が、きっと一生の思い出になるはずです。
イモトが登った海外の山【一覧表】
年月 | 山名 | 国・地域 | 標高 | 結果 |
---|---|---|---|---|
2009年5月 | キリマンジャロ | タンザニア(アフリカ) | 5895m | 登頂成功 |
2010年8月 | モンブラン(三山縦走) | フランス/イタリア(ヨーロッパ) | 4810m | 登頂成功 |
2011年8月 | キリマンジャロ(2回目) | タンザニア(アフリカ) | 5895m | 登頂成功 |
2012年1月 | アコンカグア | アルゼンチン(南米) | 6961m | 登頂断念 |
2012年9月 | マッターホルン | スイス(ヨーロッパ) | 4478m | 登頂成功 |
2013年10月 | マナスル | ネパール(アジア・ヒマラヤ) | 8163m | 登頂成功 |
2014年4月 | エベレスト | ネパール(アジア・ヒマラヤ) | 8850m | 登頂断念 |
2015年6月 | デナリ(マッキンリー) | アメリカ・アラスカ(北米) | 6168m | 登頂成功 |
2016年8月 | アイガー | スイス(ヨーロッパ) | 3970m | 登頂成功 |
2017年12月 | ヴィンソン・マシフ | 南極大陸 | 4892m | 登頂成功 |
2025年3月 | ブライトホルン(冬山) | スイス(ヨーロッパ) | 4164m | 登頂成功 |
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