映画『遠い山なみの光』感想|悦子と佐和子の記憶が交錯する“怖さ”(ネタバレあり)

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映画『遠い山なみの光』感想|悦子と佐和子の記憶が交錯する“怖さ”(ネタバレあり) トレンド

「遠い山なみの光」というタイトルからは、静かで美しい物語を想像していました。しかし、実際に映画を観てみると、心がモヤモヤと揺さぶられる、想像以上に重い作品でした。観終わったあとに「怖い」と言われる理由も、やっと腑に落ちたのです。※この記事にはネタバレが含まれます

物語の概要

物語は、主人公の悦子が過去を回想しながら家族や友人との関係を辿る形式で進みます。表面的には静かな家族ドラマのように見えますが、昭和という時代背景の中で男女の価値観の違いが色濃く反映されており、観る人の心に深く刺さります。

登場人物のすれ違いによる心の揺さぶり

映画を観て最初に感じたのは、登場人物同士のすれ違いによる心のもやもやです。互いに遠慮して本音をぶつけられなかったり、たとえぶつけても理解されなかったりする場面が続きます。特に男性と女性の考え方の違いが、昭和の時代背景の中でより際立って描かれていました。このすれ違いが、観る私たちの心を強く揺さぶります。

女性の自立への葛藤

さらに、女性の自立への葛藤も印象的でした。悦子は「女性は家で子育てをしていればいい」という価値観に抗い、自立した女性になろうとします。観ている側も女性として、男女の価値観の違いに強く違和感を覚えつつ、胸が締めつけられる瞬間でした。しかし、その選択が緒方との娘・景子に影響してしまったと悦子は考えます。景子がいなくなったことや、悦子が何度も悪夢にうなされるのは、自責の念を感じているからでしょう。

記憶のすり替えと鳥肌シーン

映画の核心ともいえる場面が、次女のニキが母・悦子に過去の話を尋ねるシーンです。悦子の話を聞いている私たちは「これは友人・佐和子の話だ」と思い込んでいますが、映画の途中で映像だけでそれが違うと感じる瞬間があります。私は事前に相関図や登場人物の関係を調べていたため、うすうす気づいていましたが、実際にそのことがわかるシーンでは鳥肌が立ちました。しかも映画内では直接的に「これは悦子の話」とは表現されません。観る人がこうした細かい描写に気づくことで、より深く映画を楽しむことができます。逆に予備知識がないと混乱する人も多いでしょう。この鳥肌モノの瞬間こそが、『遠い山なみの光』の“怖さ”を生んでいるのです。また、観客に想像を委ねる余白も多く、感じ方や衝撃の度合いが大きく変わる作品だと実感しました。

印象に残ったメッセージ

さらに印象に残ったのは、「私たちも変わりましょう!」というセリフです。映画の中では、緒方と悦子の会話で一度、そして悦子とニキの会話で二度登場します。この言葉は、現状に満足せず、前向きに生きていこうというメッセージとして受け取れます。しかし映画内では問題の解決やその後の展開にはほとんど触れられません。観る側は「これからどうするのだろう」「この問題は結局どうなるのだろう」と自分で想像するしかないのです。この余白の多さこそが、映画を観る楽しさであり、考えさせられる深さでもあります。

まとめ

総じて、『遠い山なみの光』は、美しいタイトルとは裏腹に、観る人の理解力や注意力によって受け取り方が大きく変わる作品です。昭和の価値観に翻弄される人間模様、女性の自立への葛藤、記憶のねじれが交錯する物語は、観る人によって「家族の物語」として終わるのか、それとも「記憶と感情の交錯」を深く体験するのかが変わります。観る人自身の想像力によって、この映画はより深く、怖く、そして心に残るものになるのです。

映画の背景や原作についてもっと知りたい方は、【既存記事へのリンク】もぜひご覧ください。

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