2012年9月、タレントのイモトアヤコさんが「世界の果てまでイッテQ!」で挑戦したのは、アルプスの名峰・マッターホルン(標高4478m)。前回のアコンカグア登頂で悪天候に阻まれた経験もあり、イモトさん自身、大きなプレッシャーと不安を抱えながらのチャレンジでした。
登山前日まで「登れるだろうか」という迷いや不安で心が揺れる日々。それでも一歩踏み出すと、目の前の山道だけを見つめて進むしかない状況に直面します。現地ガイドのミハエルについていくこと、高所恐怖症を克服すること、あらゆる不安を抱えながらも、彼女は頂上を目指しました。そしてついにマッターホルンの頂に立った瞬間、言葉では言い表せない達成感と安心感が訪れます。「山のてっぺんに立ったら気持ちいい」とイモトさんが語るその瞬間の感動は、多くの視聴者の心にも響きました。
一方で、登頂後の下山にヘリコプターを使用したことについて、アルピニストの野口健さんは自身のTwitterで「山登りは自力で下山するところまでが山登り」と指摘。賛否が分かれる中でも、イモトさんのひたむきな努力とチャレンジ精神は、多くの人に勇気と感動を与えました。
登山中、イモトさんを支え続けたのは現地ガイドやカメラマン、AD、そして遠くから見守る仲間たちの存在。ブログには「たくさんの方のおかげで登ることができました」と感謝の言葉が綴られ、アルピニストとして一皮も二皮もむけた実感を語っています。
マッターホルンの魅力まとめ

©Photo AC
基本情報
マッターホルンはアルプス山脈にそびえる標高4,478メートルの独立峰で、スイスとイタリアの国境にまたがります。その独特なピラミッド型の形状は、東西南北に4つの尾根(ヘルンリ尾根・ツムット尾根・リオン尾根・フルッケン尾根)を持ち、特に切り立った北壁はアイガーやグランド・ジョラスとともに「三大北壁」と呼ばれる難関です。
麓にはスイス側にツェルマット、イタリア側にチェルヴィニアの町があり、どちらも登山基地として利用されています。登山家にとっては憧れの名峰であり、観光地としても季節や方角によって異なる表情を楽しめます。
歴史
マッターホルンの初登頂は1865年7月14日、イギリス人登山家エドワード・ウィンパーたちによって達成されました。しかし下山中にパーティーの4名が滑落死する悲劇も起き、安全管理の重要性が語り継がれています。それまでマッターホルンは「登頂困難な山」として恐れられ、地域の伝承では魔物の住む霊峰として人々に神聖視されていました。
観光の魅力

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湖に映る逆さマッターホルン
マッターホルンの観光ハイライトは、湖面に映る「逆さマッターホルン」です。
- おすすめスポット:スネガ展望台(ゴルナーグラート鉄道)、シュテリゼー湖、リッフェル湖、シュバツ湖、グリンジ湖
まるでポスターのような美しい景色が広がり、写真撮影にも最適です。
三大北壁の迫力
切り立った北壁は世界的にも有名で、登山家のチャレンジ精神を刺激します。角度や光の当たり方で山肌の表情が変わるため、何度訪れても新しい発見があります。
ベストシーズン
夏(6月~8月)
- 6月中旬~:徐々に雪解けが進み、ハイキングコースやロープウェーがオープン。早すぎると一部トレイルが閉鎖される場合あり。
- 6月末~7月中旬:スイスの夏の最盛期。ヨーロッパのバカンスシーズンでもあり混雑。高山植物「スイス三大名花」(エーデルワイス、アルペンローゼ、エンツィアン)が見頃。
- 7月後半~8月:残雪はほぼ消え、秋の花が咲き始める季節。ハイキングや絶景観賞に最適。
難易度と注意点
ピラミッド型の険しい岩山、北壁はヨーロッパアルプス三大北壁の一つが特徴。
登山というより「クライミング要素の強い登山」である。
薄い空気、急斜面、気象条件が厳しいため遭難や滑落事故も発生しており、登山の成功率は50%と言われている。
体力面
ヘルンリ岩稜ルート(標高差約1,218m、登下降往復10時間以上)を登る場合:
- 必要体力の目安
- 1時間に高低差300〜400mを約4時間連続で登れる
- 往復で10時間以上の登下降が可能
- 3〜4時間連続歩行+5分程度の立ち休みで再び歩ける
- マラソン選手の持久力と短距離選手の瞬発力、両方が求められる
- 高山対応
- ベースキャンプ(ヘルンリヒュッテ:3,260m)に上がるだけでも高山病の可能性あり
- 当日の体調管理が非常に重要
技術面
- 岩場対応
- 日本基準で3級程度の岩場(ロープによる確保必須)をこなせること
- 垂直な岩壁の上り下り、三点支持の技術必須
- クライミングジムでの練習や、日常的な岩登り経験が望ましい
- 氷雪地帯対応
- 12本爪アイゼンの使用とピッケルワークが必須
- 単独登山ではルートファインディング能力も必要
- ガイド付き登山の前提
- ガイドがつく場合でも、休憩は少なめ(3〜4時間歩き続けることもある)
- 安全のためスピード重視
注意点
- 天候に左右されやすい:晴れていても突風や霧、雪で危険度が増す
- 体調管理が命:高度順応・体調の維持が登頂成功の鍵
- 装備が必須:アイゼン、ピッケル、ヘルメット、ハーネス、ロープ
- 経験者向け:初心者だけでの登頂は非常に危険
- 心構え:登頂は困難だが、成功すれば感動は格別
まとめ
マッターホルンは登山家にとっては挑戦の山であり、観光客にとっては美しい景観の宝庫です。湖面に映る逆さマッターホルンや季節ごとの高山植物、三角形のピラミッド型の山容など、見どころが豊富で、訪れる人々を魅了します。歴史的背景や登山の難しさを知ることで、観光の楽しみ方もさらに深まるでしょう。
そしてイモトさんの挑戦は、単なるテレビ企画を超えた「人間の挑戦と感動の物語」。不安や恐怖に向き合い、一歩ずつ進む姿勢、そして仲間への感謝が、視聴者に勇気を与えました。マッターホルンという名峰の魅力を味わいながら、登山の困難さと喜びを実感できるストーリーです。
イモトが登った海外の山【一覧表】
年月 | 山名 | 国・地域 | 標高 | 結果 |
---|---|---|---|---|
2009年5月 | キリマンジャロ | タンザニア(アフリカ) | 5895m | 登頂成功 |
2010年8月 | モンブラン(三山縦走) | フランス/イタリア(ヨーロッパ) | 4810m | 登頂成功 |
2011年8月 | キリマンジャロ(2回目) | タンザニア(アフリカ) | 5895m | 登頂成功 |
2012年1月 | アコンカグア | アルゼンチン(南米) | 6961m | 登頂断念 |
2012年9月 | マッターホルン | スイス(ヨーロッパ) | 4478m | 登頂成功 |
2013年10月 | マナスル | ネパール(アジア・ヒマラヤ) | 8163m | 登頂成功 |
2014年4月 | エベレスト | ネパール(アジア・ヒマラヤ) | 8850m | 登頂断念 |
2015年6月 | デナリ(マッキンリー) | アメリカ・アラスカ(北米) | 6168m | 登頂成功 |
2016年8月 | アイガー | スイス(ヨーロッパ) | 3970m | 登頂成功 |
2017年12月 | ヴィンソン・マシフ | 南極大陸 | 4892m | 登頂成功 |
2025年3月 | ブライトホルン(冬山) | スイス(ヨーロッパ) | 4164m | 登頂成功 |
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